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「有孔成型鋼板」とも呼ばれる内外装建材で、パンチングメタルを折り曲げて風圧減衰特性や構造耐力などを付加した建築金物。主に防風柵に利用されてきたが、加工技術や意匠性の向上に伴って建築分野でも脚光を浴びるようになった。建築材料としての有孔折板は、ファサードの壁面スクリーンや有孔ルーバー、バルコニー手摺、 階段目隠し、間仕切り、吸音天井、壁面緑化の基材、トップライト天板、構造面材など、様々な用途に利用されている。
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使用材料と加工方法
用途や設置条件に応じて、ガルバリウム鋼板、アルミ合金、ステンレスなどが選ばれる。板厚は一般に0.8〜1.6mm。多くの場合、パンチングプレス加工やベンド加工、R曲げ加工などの製造工程を経て出荷される。屋外用の場合、光触媒・フッ素樹脂コーティングが施されることも多い。
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製品仕様とデザイン
防風柵や吸音天井材などに使用される製品は、一定の性能を満足するため、パンチングについては伝統的な並列・角千鳥・ヘキサ配列を採用し、ベンド角度や働き幅も規格化されている。しかし近年は、装飾金物としての有孔折板を大胆に使った、高度に意匠的な作品計画や施工事例が増えており、建築家がディテールから設計できるオーダーメイド加工品も製造されるようになった。例えば、簡易なイラストではなく、風景や人物像を厳密なアルゴリズムで点描変換したアートパンチングや、それらの有孔折板を重ね合わせて万華鏡のような効果をもたらす多層有孔ルーバー、特殊テンション架構や照明デザインとの斬新なコラボレーションなどである。
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建築における有孔折板の可能性
建築の表層意匠は有孔折板のデザイン重畳化とともに、パンチングの装飾性や金属素材の凹凸ディテールといった建築金物としての質感・リアリティとともに、穿孔文様に微分された光と影による二次装飾・サインディスプレイまたはイルミネーション機能、視線や風景が透過しつつ遮られる空間心理学的効果、太陽や視線の移動によるそれらアスペクトの複合的経時変化を、当初は無意識的に、近年は明瞭に企図するようになった。今後さらに鋭敏でデリケートなファサード・デザインや、大空間を構造的に彩るイノベーティブな様式が提案されるであろう。
有孔折板によって表象される典型的なボリュームは、いわば「鋼鉄の蚊帳」であり、「装飾的な檻」であるが、その内部で体感する密やかな心地よさは、森に住んでいた人類が樹影に憩い、守られつつ必要な情報や糧を獲得していた先史時代に通ずるかもしれない。翻って、今日の陰湿な犯罪を多発する社会状況から、「透過しつつ遮る建築外皮」はますます求められているといってよい。有孔折板のデザイン多様化は未だ始まったばかりであり、今後も予想できないインパクトを建築にもたらすことが期待される。
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